この債務名義ということばは法律用語でなかなか、理解が難しい言葉です。

社会生活の中で起こる金銭的なトラブルに関する言葉で債権を強制的に回収する法的な手続きに必要な書類です。

簡単に言えば、債務名義とは、権利があるということを公の機関が確認したことを表す書面のことです。

公の機関とは、公共的な機関全般のことで。政府及び独立行政法人、地方公共団体及びその機関と新聞社、放送局、鉄道、空港、郵便局、運輸業、通信機関、電力会社、病院、大学、金融機関などのことです。

債務名義の種類

債権回収を法的に行うには債務名義が必要ですが、どんなものがあるか。

1、確定判決
訴訟を提起して、給付判決(金銭の支払い等の給付を命じる判決)が言い渡され判決が確定した時に、この確定判決が債務名義となります。しかし、控訴されると判決は確定しません。確定判決は裁判所が厳格な手続きにより、証拠に基づいて権利の有り無し及び範囲などを判断したものであり、最も典型的な債務名義です。ただ欠点は判決が下されるまで、長い期間と多額な費用がかかります。

2、仮執行宣言付き判決
訴訟を提起して、仮執行宣言付きの給付(支払い)判決が言い渡されたときはこの仮執行宣言付き判決が債務名義となります。つまり、判決に仮執行宣言が付いたときは、判決の確定を待たずに、強制執行ができます。これはあくまでも裁判所が判断します。

3、和解調書
訴訟を提起して、訴訟上の和解をしたときは、裁判所において和解調書が作成されますが、この和解調書は債務名義となります。訴訟上の和解をするためには、債権者、債務者両者が訴訟の勝敗の見込みや紛争を早期に解決利益、譲歩による不利益などを総合的に考慮して判断します。

4、仮執行宣言付き支払い督促
簡易裁判所に支払い督促の申し立てをすると、一定の要件を充たしている場合は、書類審査のみで支払い督促が交付されます。そして支払い督促受領後2週間以内に異議申し立てをしないときは、債権者は支払い督促に仮執行宣言を付けるよう申し立てることができ、この仮執行宣言付き支払い督促は債務名義となります。但し、債務者が異議申し立てすれば、通常の訴訟に移行します。

5、執行受諾文言付き公正証書
一定金額の金銭の支払い等を目的とする請求について作成された公正証書のうち、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述の記載のあるものをいい、この執行受諾文言付き公正証書は債務名義となります。公正証書は公証役場で公証人に作成してもらいます。

この公正証書は裁判所を通さなくても、簡便な手続きで迅速に取得することが可能な債務名義です。強制執行は金銭回収の最後の手順ですが、これらの債権名義がないと、簡単には回収ができません。

従って金銭の貸し借りを行う時に、最悪の事態を想定して、債務者の協力のもと、支払い、返済が困難になった時は強制執行も止む終えません、という一筆を入れてもらう、これが公正証書などの債務名義です。