この記事では、任意整理、民事再生、自己破産という3つの債務整理のデメリットやリスクについて解説していきます。
債務整理は、借金問題に苦しむ人たちを救済する法律で守られた解決手段です。
その一方で、安易に債務整理を行い、思わぬデメリットやペナルティに悩まされるということも少なくありません。
債務整理を検討する時には、どんなデメリットがあり、できなくなることは何なのかよく理解してから実行することが大切です。
ちなみに、この記事では、任意整理・民事再生・自己破産の基本的な解説はせず、デメリットを中心に解説しています。
もし、任意整理・民事再生・自己破産の基本的な解説が必要な場合は、下記の記事をご覧ください。
【参考】債務整理とは?
なお、自分の借金が債務整理でどれくらい減るか知りたい場合は、借金減額シミュレーターが便利です。
目次
任意整理のデメリット
任意整理は、3つの債務整理の中で比較的手続きが簡単な方法です。
裁判所を通さずに債権者との交渉で支払額の減額を行います。
それでは、任意整理のデメリットにはどんなことが考えられるでしょうか?
個人信用情報に事故情報が残る(ブラックリスト)
任意整理をすると、個人信用情報に事故情報として記録され、約5年間残ります。
記録が残っている間は、新規クレジットカードの作成や、新規借り入れができません。
大幅な債務減額は期待できない
民事(個人)再生や自己破産と比べると、債務の減額幅が小さいです。
今すぐに借金をゼロにしたり、大幅に圧縮するということは期待できないでしょう。
また、2010年6月以降に開始した取引については、減額ができない可能性もあります。
今後も返済は続く
デメリットとは言えないかもしれませんが、任意整理の場合、債務が免除されるわけではありません。
債権者との話し合いの上、債務を減額してもらい、その減額された金額を分割払いで返済していきます。
支払いを続けるための収入が必要
減額してもらった債務は、今後も分割して返済を続けていくため、返済できるだけの収入の見込みがない人は利用できません。
また、多重債務を抱えている人で、住宅ローンなどを整理対象から外し、一部の債務のみ任意整理する場合があります。
こういった場合には、整理した債務の返済額と、整理から外した債務の返済額の合算が思ったより高額になり、毎月の返済がいまだ厳しいということも考えられます。
あくまでも債権者との和解が必要
任意整理の場合、裁判所の通告ではなく協議の上で減額できるかどうかが決定されます。
債権者との和解ができなければ減額がされません。
個々の支払い状況や債権者の考え方により、和解が成立しないケースもあるようです。
民事(個人)再生のデメリット
民事(個人)再生は、裁判所に申告し債務を減額してもらう手続きです。
一般的に債務の1/5程度まで減額することができ、その後3年から5年で完済することが条件です。
民事(個人)再生にもデメリットはあります。
個人信用情報に事故情報が残る(ブラックリスト)
民事(個人)再生が決定すると、その後5年から10年の間、個人信用情報に事故情報として記録されます。
記録がある間は、新規借り入れ、新規クレジットカード作成ができません。
債務は免除されない
民事(個人)再生の場合、債務額は大幅に圧縮されるものの全額免除とはならないので、依然返済は続いていきます。
住宅資金特別条項により持ち家を残した人は、住宅ローンの支払いはそのまま残ります。
毎月の支払い額として、減額された債務の返済額と住宅ローンの返済額の合算を考えておく必要があります。
収入のあることが条件
今後も支払いが続くため、返済に十分な収入のあることが条件となります。
証人への影響
保証人を立てていた債務がある場合、債務者から返済してもらえなかった返済分は、保証人へ請求されます。
住宅資金特別条項により持ち家を残した場合の住宅ローンに関しては、債務整理をしていないことになるので、住宅ローンの保証人には請求はいきません。
官報に載る
裁判所を通すことにより、国が発行する官報という機関紙に掲載されます。
官報は一般の人が目にする機会は大変少なく、近所に知れ渡るなどの心配はあまり必要ありません。
ただし、闇金業者などが官報の情報をチェックして融資に関するダイレクトメールなどを送ってくる場合があるので注意が必要です。
自己破産のデメリット
自己破産の手続きをすると、裁判所からの免責許可により全ての債務の返済義務が無くなります。
借金をすべて帳消しにしてもらうようなもので、大きな負債を抱えて苦しんでいる人にはメリットの大きい救済方法です。
ただしその分デメリットも大きく、慎重に検討し十分な知識を得た上で実行に移すことが重要です。
個人信用情報に記録される(ブラックリスト)
自己破産の免責確定より5年から10年の間、個人信用情報に事故情報が記録されます。
この間は、新規借り入れ、新規クレジットカード作成などができなくなります。
住宅や車などほとんどの財産を失う
「全ての債務の支払い義務がなくなる」ということだけ聞くと、その後の生活はとても楽になりそうですが、実際はそうではありません。
破産手続きとは、破産者の財産を債権者に分配することであり、持ち家、車などほとんどの資産、財産を手放すことになります。
基本的に20万円を超える財産が対象と言われていますが、預貯金、退職金、生命保険、不動産など、それぞれ細かい規定があります。
一定期間、職業制限がある
自己破産の手続き開始から免責が確定するまでの間、職業の資格制限があります。
一例として、弁護士、税理士、社会保険労務士などの仕業、宅地建物取引主任者、生命保険外交員、警備員などがあげられます。
あくまでも免責が確定するまでの間だけで、免責が確定すれば自動的に復職が可能となります。
手続き開始から免責確定までは、通常3か月から6か月程度といわれています。
保証人への影響
自己破産手続きにより債務者本人は債務の支払い義務が無くなりますが、保証人を立てている場合にはその保証人が返済義務を負ってしまいます。
返済能力がない場合には、保証人も債務整理を行わなければならない可能性も出てきます。
また、夫が自己破産し妻が保証人であった場合には、妻も自己破産することも考えられます。
こうなると、夫婦ともに財産を失い、クレジットカードも持てないという大変な状況を覚悟しておかなければなりません。
この保証人の問題は、債務者本人にとっても恩を仇で返すようで大変心が痛むことであり、これを理由に自己破産したくないという人もいます。
しかし、破産を考えるほどの状況を続けていても事態は悪化の一方です。
保証人になってくれた人には正直に状況の説明をし、誠心誠意謝罪するしかありません。まずはこの状況を抜け出すことが先決です。
免責許可が下りない場合がある
これは大変まれなケースですが、債務の内容が免責不許可事由にあたる場合は、免責許可が認められません。
免責不許可事由の一例として、以下のようなモノがあります。
- 浪費やギャンブルによる借金
- 財産を隠していた時
- 虚偽の説明、書類の偽造などがあった時
- 財産の引き渡しを拒否した時
- 一部の債権者にのみ返済していた時
- 免責申し立て日から過去7年以内に免責許可決定を受けていた時
免責不許可事由があっても、事情によっては裁判所が裁量免責を与えることもありますので、このような事由に思い当たる場合は、まず専門家に相談するべきです。
官報に載る
裁判所を通した手続きのため、民事(個人)再生と同じように、官報という国の機関紙に掲載されます。
官報は一般の人が目にする機会は大変少なく、近所に知れ渡るなどの心配はあまり必要ありません。
ただし、闇金業者などが官報の情報をチェックして、融資に関するダイレクトメールなどを送ってくる場合があるので、注意が必要です。
まとめ
任意整理、民事再生、自己破産に共通のデメリットとして、個人信用情報に記載され新たな借り入れができなくなることがあげられます。
また、保証人の問題も関わってきます。
任意整理と民事再生については今後も月々の返済が続いていくので、返済できるだけの収入があることが条件となっています。
自己破産では債務の返済は帳消しとなりますが、同時にほとんどの財産も失うことになるなど、債務の減額幅に比例するかのようにデメリットも大きくなっています。
減額幅の大きさだけにとらわれて安易に債務整理の方法を選ぶことはとても危険です。
自分の抱えている債務の内容、債務額の大きさ、保証人の有無などを勘案し、弁護士・司法書士などの専門家と話し合いながら慎重に検討していきましょう。
なお、当サイトでは、債務整理を扱う弁護士・司法書士5,200件以上を地域別にまとめていますので、そちらも参考にしてみてください。
また、債務整理のメリットについてまとめた記事もありますので、そちらも参考にしてください。
債務整理の口コミや、評判の高い法律事務所についても紹介しています。
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