今回は、債務整理するため手順や流れを詳しく解説していきたいと思います。
借金が膨らみ返済ができないとき、返済のためにまた借り入れをしてしまうことがあります。
このような負のサイクルに陥ってしまうと、そこから抜け出すことは簡単ではありません。
こんな時、債務整理という救済策があります。
でも、債務整理するということはある意味特殊な経験ですので、一般的にその手続きについて知らない人がほとんどではないかと思います。
債務整理をしたいけれど、実際どうすればよいのか?何から始めるのか?わからなくて時間だけが過ぎていき、その間に借金はどんどん増えてしまったのでは困りますね。
そこで今回は、債務整理のやり方や、その手順、流れを詳しく解説していきたいと思います。
なお、自分の借金が債務整理でどれくらい減るか知りたい場合は、借金減額シミュレーターが便利です。
目次
債務整理の流れ(前半)
債務整理前半の一般的な流れは以下のように進んでいきます。
①法律相談
↓
②依頼する弁護士を決める
↓
③弁護士または司法書士に正式依頼
↓
④着手金の支払い
↓
⑤弁護士または司法書士が債権者へ受任通知を送付
↓
⑥引き直し計算
↓
⑦債務整理の方法を選択
第一ステップは法律相談から
上記のように、債務整理の第一ステップはまず相談から始まります。
役所で市民無料法律相談を開催していたり、法律事務所でも初回相談を無料で行っているところがあります。
こういった場を利用して、まずは悩みを相談してみましょう。
法律相談をすると、自分の問題にあった弁護士や司法書士を紹介してもらえたり、悩み解決のための方向性を見出すことができます。
通常、無料法律相談は時間が限られていますので、その時間内に自分の置かれている状況を伝える必要があります。
弁護士や司法書士からの質問に効率よく答えることができるよう、自分が置かれている状況についてどう伝えるか考えをまとめておくことをお勧めします。
最低限の情報として、借金の総額、借入先の数、収入などは正確に答えられるように準備しておきましょう。
また、債務整理の方法によってかかる費用も異なってきますので、それぞれの費用について確認しておく必用もあります。
弁護士や司法書士への依頼と事前準備
依頼する弁護士や認定司法書士が決まったら、正式に債務整理を依頼します。
弁護士や司法書士と委任契約を結ぶ際に提示が必要な書類があります。
また、実際に債務整理を進めていく段階ではさらに多くの資料の収集が必要となり、その収集には正直言って手間と時間がかかります。
債務整理を思い立った時から気が付いたものは少しずつ準備していくと後が楽です。
以下は契約時、またはその後必要となる書類の例です。
- 身分証明書(免許証、保険証などの公的機関によるもの)
- 債権者一覧表
- 借入時の契約書、借り入れ明細書など
- 金融業者からの請求書や督促状など
- 全てのクレジットカード
- 印鑑(シャチハタ以外)
- 預金通帳
- 家計の収支表、家計簿など(経済状況を確認できるもの)
- 生活保護や年金の受給証明書
- 生命保険証書、解約返戻金証明書など
- 勤務先の退職金見込み額
- 不動産登記簿謄本
ところで、債務整理を依頼する限りは、担当弁護士や司法書士にすべてを包み隠さず伝えなければなりません。
借金の総額はもちろん、なぜ借金をしてしまったか?、どのくらいの間滞納しているのか?、収入額など細かく質問された時、ギャンブルに使ったとは恥ずかしくて言えない、身の丈に合わない浪費と言ったら責められるのでは?こんなに少ない収入では恥ずかしいなど、みえや建前が先に立ちごまかしたくなることもあります。
しかし、誤った情報の上には債務整理の成功はありません。すべては自分のためですので、事実を正直に話しましょう。
着手金の支払い
通常、委任契約をするとともに着手金が発生します。原則として着手金の支払いがないと債務整理の手続きが開始されません。
しかし、法律事務所によっては、着手金無料とする場合があったり、一部入金でよい場合があったり、取り扱いが様々です。
また、委任契約が交わされると、弁護士や司法書士から債権者宛に「受任通知」が送付されす。これは、依頼者がこれから債務整理をすることを知らせるものです。
これにより、債権者からの督促や連絡は全て弁護士や認定司法書士宛に届くことになります。
また、受任通知送付から手続き完了までの間は、月々の返済がストップします。
取引履歴開示
受任通知を送付すると同時に、債権者に取引履歴の開示を請求します。
取引履歴とは、過去の一回一回の借入と返済の記録が記載された書面です。
これを見ることで、過去にどのくらいの利息を払っていたのか、どのくらいの期間返済を続けていたのかなどがわかり、「引き直し計算」をすることができます。
引き直し計算
「引き直し計算」とは、利息制限法の上限を基準として利息を計算しなおすことです。
2010年以前には、グレーゾーンと呼ばれる法外な高金利で貸し付けをしていた消費者金融が多くありました。
しかし、法律改正に伴いこのグレーゾーンの金利は違法なことが一般的に知られるようになり、払いすぎた利息の返還請求が行われるようになりました。
債務整理の具体的な手続きを始める前に、同じ様に引き直し計算をし、どのくらい過払いがあるか、過払い金を返還した後に残る借金はいくらか、またそれが返済できる金額かどうかを見ていきます。
債務整理の方法を選択する
引き直し計算により、借金総額からどのくらい減額できるか、残る借金がいくらか見当をつけることができます。
これを元に、どの債務整理の方法が適切か検討していきます。
ポイントは、3年で完済できる金額かどうかです。
債務整理の中には、任意整理、民事再生、自己破産という主に3つの方法があります。この中で、整理後にも返済が発生するものは、任意整理と民事再生です。
任意整理では、減額後の借金を3年を目途に完済させることになっています。
そのため、引き直し計算後の借金残高を3年で完済できるか?そのための安定した収入はあるか?がポイントとなります。
3年で完済できそうであれば、任意整理の選択が可能です。
引き直し計算後の借金総額を3年で返済することが厳しい時は、民事再生や自己破産を検討します。
民事再生では、債務総額を1/5~1/10まで圧縮できるため、実際には引き直し計算による減額よりもかなり大幅なカットが期待されます。
そのため、任意整理が難しい時でも、民事再生であれば返済が可能なケースも多いです。任意整理は無理だが自己破産は避けたい時、住宅ローンをそのまま残したい時にはお勧めの方法です。
到底返済できそうもない莫大な借金がある、失う財産がないという時には自己破産を選択すことになります。しかし、自己破産にはデメリットも多く、最終手段として考えることが多いです。
このように債務整理には複数の方法があり、借金の総額や収入、資産などの照合が選択の目安となります。
実際には依頼者が持つ問題や状況は一人一人異なり、細かい法律の縛りなどもあるため、依頼者が自分の判断だけでその選択を行うことは容易ではありません。
弁護士や司法書士など専門家の視点で調査検討してもらい、アドバイスをもらうことがベストな方法です。
その結果、自分が当初考えていた方法と提案された方法が異なったというケースもあるでしょう。
弁護士は依頼者にとって最良の方法として提案しているのですが、もし納得いかない場合はその理由やメリット・デメリット、必要な費用などについてしっかりと話し合うことをお勧めします。
納得のいかないまま手続きを進めてしまうと、後々トラブルとなる可能性もあります。
債務整理の流れ(後半)~各債務整理の手順~
どの債務整理を行うか決まったら、いよいよそれに向けて準備を始めます。
ここでは債務整理の種類ごとに流れを説明していきます。
任意整理
①弁護士が引き直し計算をもとに、債権者との交渉を開始。
↓
②全ての債権者との交渉がまとまった時点で、和解締結。
↓
③弁護士から依頼者へ、和解締結の連絡。
↓
④和解内容に沿って、返済を開始。
任意整理では、一旦弁護士や司法書士に正式依頼してしまうと、依頼者がやらなければならないことはありません。手続き完了と弁護士や司法書士からの連絡をひたすら待つのみとなります。
和解が締結するまで、弁護士や司法書士から依頼者へ一度も連絡が来なかったということも少なくありません。
しかし待つ方としては手続きは進んでいるのか?と不安になることもありますので、このような時は、遠慮なく問い合わせをしてみましょう。
和解後は、減額後の残高を約3年かけて返済していきます。
民事再生(個人再生)
①申立てに必要な書類などの準備。
・必要書類収集、分割予納金の準備、債権者との事前協議、計画弁済の算定など。
↓
②準備ができ次第、裁判所へ民事再生の申立てを行う。
・裁判所によって異なるが、個人再生委員が選任される場合は、ここで同時に選任される。
↓
③個人再生委員が選任された場合は、再生委員と面接。
↓
④個人再生の開始決定。
↓
⑤債権届出期間と意義申述期間。
・借金の存在や金額について、債務者と債権者との意見の食い違いを調整する。
↓
⑥再生計画案の提出。
↓
⑦個人再生計画案の認可決定。
↓
⑧計画案に沿って、返済を開始。
・通常3年での返済が必要。事情により最大5年の返済が可能。
民事再生では、裁判所に申し立てを行うことから、手続きが複雑になります。
まず依頼者としては、申立てに必要な書類の収集から始まります。
民事再生申立書、陳述書、債権者一覧表など裁判所から取り寄せて記入する書類から、それに添付する様々な証明書を集めます。
戸籍謄本、住民票など役所から取り寄せる書類、過去の給与明細、課税証明書、退職金見込み額証明書、預貯金通帳、生命保険証券、解約返戻金額証明書、不動産登記簿謄本、車検証、車の査定書、住宅ローン契約書などなど、かなり多くの書類が必要となってきます。
これらの取集だけで、1ヵ月ほどかかるといわれています。
申立て書や添付書類が全て揃ったところで、裁判所へ申し立てを行います。
また、この段階で裁判所へ支払う予納金の支払いも発生してきます。官報公告費用12,000円、予納郵便4,000円~8,000円、個人再生委員が選任された場合にはその報酬150,000円~250,000円です。
申立てを行った後は裁判所での審査が行われますが、再生計画認可確定まで4ヵ月から6ヵ月かかります。
この間は、債権者への返済がストップされていますので、生活を立て直したり、弁護士費用を積み立てたりするとよいでしょう。
再生計画認可が確定されると、その翌月から再生計画に則り返済を開始します。通常、返済期限は3年または5年となっています。
自己破産
①必要書類の準備期間
・2か月分の家計簿、資産明細目録、給与明細などを収集。
↓
②裁判所に自己破産を申立てる。
↓
③破産審尋(面接)
・裁判所によって扱いが異なる。
↓
④自己破産の開始決定。同時廃止の場合はここで同時に完了。
↓
⑤債権者からの意見申述期間。
・債権者が異議申し立てができる。
↓
⑥免責審尋(面接)
・裁判所によって扱いが異なる。
↓
⑦裁判所から免責許可決定通知が弁護士宛に送られる。
↓
⑧債権者からの不服申立てがなければ、免責が決定となる。
自己破産の手続きにも、たくさんの書類の収集が必要です。破産申立書、免責申立書、陳述書、債権者一覧表、資産目録、家計収支表を裁判所から取り寄せて記入します。
さらに、それに添付する様々な証明書を集めます。戸籍謄本、住民票など役所から取り寄せる書類、過去の給与明細、源泉徴収票、課税証明書、退職金見込み額証明書、預貯金通帳、生命保険証券、解約返戻金額証明書、賃貸契約書のコピー、不動産登記簿謄本、車検証、車の査定書、住宅ローン契約書、クレジットカードなどなど、かなり多くの書類を収集します。
これらの書類は自己破産の申し立てをする前に集める必要があり、収集だけで2~3ヵ月かかると考えてよいでしょう。
破産手続きを開始した後、裁判所によっては「審尋」と呼ばれる裁判官との面接が必要な場合があります。裁判所によって対応が異なりますが、弁護士が代理人として出席する場合、一対一ではなく集団面接の場合などがあります。
内容的には、「虚偽の申請をしない」「免責確定後は生活態度を改善する」など、自己破産申し立てにおいての注意点の確認、提出書類のチェックなどです。
自己破産の手続は、無事に免責が確定するまで6ヵ月から1年という長丁場です。この間は、今まで追われていた借金の返済がストップしていますので、その分を弁護士費用のために積み立てていくとよいでしょう。
もちろん、免責が確定すればその後の返済は全てなくなります。
まとめ
債務整理をしようと思っても、いざとなると何から始めてよいのかわからず二の足を踏んでしまうものです。
債務整理をするための第一歩は「相談」です。役所の市民相談、無料法律相談、または法律時事務所でも初回無料相談を行っているところがあります。
まずは勇気を出してそのドアをたたいてみましょう。相談することで、自分に合った弁護士や司法書士を紹介してもらえたり、今後の方向性が見えてくることがあります。
債務整理には複数の種類があり、また一人一人抱えている問題や状況が異なりますので自分に最適な方法を見分けることは容易ではありません。専門家である弁護士や司法書士に相談し、アドバイスをもらうことがベストな方法です。
また、依頼したからには自分の置かれている状況を、どんなに言いにくいことでも包み隠さず伝える必要があります。絶対に嘘はいけません。
正確な情報がなければ弁護士や司法書士も正確な判断ができないからです。結果、債務整理が失敗に終わってしまうこともあり得ます。
依頼後、債務整理の方法によっては、必要書類作成、大量の書類の収集を行わなければならず、その多さに辟易してしまうこともあります。しかし、ここをクリアしないと債務整理の成功はありませんので、時間はかかっても一つ一つ根気よく集めていく必要があります。
手続き完了までの間は、債権者への支払いがストップされていますので、その分を弁護士費用のために積み立てておくとよいでしょう。
なお、当サイトでは、債務整理を扱う弁護士・司法書士5,200件以上を地域別にまとめていますので、そちらも参考にしてみてください。
また、債務整理の口コミや、評判の高い法律事務所についても紹介しています。
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