債務整理をする人は、長い間借金に苦しみ、わらにも縋る思いで法律事務所のドアをたたきます。
弁護士や認定司法書士に債務整理を依頼することで、心の底からほっとする思いがこみ上げてくることでしょう。
しかし残念なことに、その信頼すべき弁護士や認定司法書士と依頼人の間に、トラブルが発生するというケースもゼロではありません。
致し方ない理由であるケースもありますが、一方で悪質なケースも発生しています。
今回は、債務整理をすることにより発生する弁護士や司法書士とのトラブルについて、その例や対策も合わせて解説していきます。
目次
弁護士や司法書士とのトラブルとは?
債務整理をする過程で、依頼した弁護士または司法書士と依頼人の間にトラブルが発生することがあります。
債務整理をするという時は、借金返済に苦しみ藁(わら)にも縋る思いで行動を起こすものですが、よりによって依頼した弁護士や司法書士との間に金銭トラブルが起きてしまうという残念な結果となってしまうことがあります。
これはいったいどういうことなのでしょうか?
債務整理を行った結果、依頼人が満足できる結果を得ることができなかったり、腑に落ちない結果だった、債務整理をする前よりも経済的負担が増えてしまったということがあります。
例えば、
- ①債務整理をしたが、納得できるだけの減額がされなかった
- ②減額はされたものの、弁護士に支払う費用が高額で、結果的には金銭的負担が増えてしまった
- ③債務整理の進捗状況の報告がなく、不利な条件で和解されていた
- ④減額ができずに、弁護士費用だけ残ってしまった
- ⑤弁護士や司法書士が債務整理に慣れておらず、失敗に終わった
依頼人は、このような不満を抱きながらも、どうしたらよいかわからないというのが正直なところでしょう。
その不満や思いが果たして声を上げるべき正当なものなのか、あるいは単なる自分の無知によるものなのかさえわからず、そのまま流されてしまい、要求されるままに費用を支払ってしまうというのが現状です。
トラブルの原因
本来、弁護士や司法書士と依頼人の間には強い信頼関係が成り立つべきなのですが、こういったトラブルが起こるには何等かの理由があります。
例えば、弁護士が依頼人が納得できるような丁寧な説明をしなかったとか、依頼人が細かいところまで理解していなかったということが考えられます。
このようなことのないよう、依頼する前、相談の段階で、自分が納得できるまで丁寧に説明をしてもらうことが重要となります。
債務整理は法律に則っているため、一般の人にとってはわかりにくい言葉も多いので、口頭で一度に説明されても、全てを頭の中に収めることは容易ではありません。
せめて費用に関しては、しっかり書面に残したものを提示するよう頼んでみるとよいでしょう。
中には、費用だけでなく、債務整理に関する流れなどもわかりやすく書面に残してくれる優良な弁護士や認定司法書士もいます。
トラブルは「過払い金返還請求」に多い
これらの弁護士や司法書士とのトラブルは、債務整理の中でも「過払い金返還請求」に多いです。
1.すでに完済した人でも取り戻せる過払い金返還請求
「過払い金返還請求」は、すでに完済した借金について請求するものです。
2010年以前には、法外に高い利息を課した貸金業者が多かったため、本来支払わなくてもよい高額な利息を返済していた人がいます。
過払い金返還請求をすると、過去に払いすぎた利息を取り戻すことができます。
長い間借金の返済をしていた人ほど過払い金が発生する可能性が高いです。
2.任意整理でも「過払い金返還請求」をしている
現在借金の返済を続けている人でも、任意整理の手続きを行うと、その一環として過払い金返還請求が行われます。
「すでに返済した分」にかかる利息のうち、法外な高金利で計算された分があれば、取り戻せる可能性があります。
任意整理の一環として過払い金返還請求を行った場合には、返還された過払い金は、まだ残っている借金の返済にあてることになります。
これにより、残った借金が減額され、将来の利息カットと共に借金の返済をさらに楽にするという仕組みになっています。
さて、この過払い金返還請求は任意整理と同様、裁判所を通す必要がありません。
ある意味弁護士や認定司法書士の独断でその手続きを進めることができます。
また、その作業自体も比較的容易なことから、割のいいビジネスと化していることが問題になっています。
過払い金返還請求のビジネス化とは?
上記でも述べたように、過払い金とは、過去に払いすぎた利息のことです。
貸金業者が貸し付けを行う際、上限金利が法律で定められています。その法律は、「利息制限法」と「出資法」の二つです。
2010年以前は、これら二つの法律による金利上限が異なっており、利息制限法では15~20%、出資法では29.2%でした。
この差を俗にグレーゾーン金利と呼んでいます。
そのため、貸金業者の中には、出資法の29.2%を基準とした高金利で貸し付けをしていた会社も多かったのです。
しかし、2010年に法律の改正があり、出資法の金利上限が利息制限法と統一されました。このことから、それ以前に払っていた利息が法外に高すぎたということが一般的に知られるようになり、その返還を求めるようになったのです。
これに伴い、「過払い金返還請求」「高すぎた利息を取り戻そう」というようなCMを流す法律事務所も増え、過払い金バブルとも呼ばれる一種のブームが巻き起こりました。
弁護士や認定司法書士のほとんどは、依頼者の立場に立ち、責任をもって依頼を受け、誠実な対応をしています。
万が一、説明不足があったり依頼者が理解しきれない部分があったとしても、故意に依頼者を欺こうとする悪質なケースとは異なる場合がほとんどです。
しかし、冒頭でもふれたように、過払い金請求の手続き自体は他の事件と比べれば比較的簡単といわれています。
大量に受任しても簡単に処理しようと思えば時間をかけずに処理できてしまい、言い方は悪いのですが、労力をかけずに稼ぐことができてしまいます。
そのため、ほんの一部の弁護士や認定司法書士の中には、大量に過払い金返還請求の事件を受任し、事務所の利益重視と疑われるような処理を行っているという形跡も見受けられます。
よくあるトラブルの例
①依頼人が法律について素人であることをいいことに、レベルの低い早期解決方法を強要する
過払い金返還請求は、その気になれば素早く簡単に処理することができるため、大量に過払い案件を受任すれば、次々と着手金などの報酬を得ることができます。
一件の事件に時間をかけたくないことから、依頼人が減額内容などに納得していないにもかかわらず、何かしら理由をつけ、強引に早期和解を強要する場合があります。
さらには、本人の意思確認なしに、独断で和解をしてしまうケースも報告されています。
また、担当した弁護士や認定司法書士が貸金業者と手を組んでおり、貸金業者に有利な内容で和解を強要するといったケースもあるようです。
②相場よりも高い報酬や費用を請求する
通常、債務整理の手続きに係る報酬は、「着手料」「解決報酬金」「減額または過払い金報酬金」の3本立てになっています。
弁護士や認定司法書士によっては、これらの報酬を、相場より高く設定して請求してくる場合があります。
想定していた以上の成功報酬を請求したり、手続き後に何かしら理由をつけて「○○手数料」という追加料金を請求するケースも見られます。
受任する前の相談の段階で、故意に明確な報酬金の提示を避け、後から高額な請求をしたり、毎月〇万円を3年間支払うよう契約させていたという事例も報告されています。
2011年4月以降に新規受任された事件からは、日本弁護士連合会により以下のような上限が定められています。
依頼するときにこのような知識を頭に入れておくと、万が一高額な報酬を請求された時などに反論することができます。
解決報酬金 | 1社当たり2万円以下(商工ローンの場合は5万円以下) |
---|---|
減額報酬金 | 減額分の10%以下 |
過払い金報酬金 | :訴訟無しの場合は回収額の20%以下、訴訟有の場合は回収額の25%以下 |
③依頼するときに説明された金額よりも、実際に返還された金額が大幅に少なかった
弁護士や認定司法書士に過払い金返還請求の相談をすると、「多額の過払い金が発生している」「まかせてくれれば○○円は取り戻せる」などという話をすることがあります。
ところがふたを開けてみると、実際に戻ってきた過払い金はその半分にも満たなかったという結果に不満を感じる依頼者も少なくありません。
残念ながら、弁護士や認定司法書士によっては、単に知識や経験が少なく債務整理に失敗してしまったという場合もあります。
逆に、なんとか受任して着手金や報酬を得たいという思いから、故意に過大な話をして依頼人を引き込み、いかにも大きな利益が見込めように信じさせるというケースもあります。
④過払い金の着服
過払い金返還請求の手続きが成功すると、返還される過払い金は一旦弁護士宛に振り込まれます。
弁護士はそこから成功報酬や手数料などを差し引き、残った分を依頼者に返還することになります。
この時、差し引かれた成功報酬金や事務手数料、返還された過払い金の金額などについて、詳細に記した明細が提示されるべきです。
しかし、中にはこういった明細が提示されない場合も多く、依頼者はその内容を知らないまま手続きが無事終了したと思ってしまいます。
また、依頼者本人に実際より少ない金額を報告するというケースもあります。
これらは、依頼者の無知に乗じた不誠実な対応に他なりません。
⑤進捗状況の報告がなく、取引履歴など手続きに必要であった書類を本人に見せない
電話をしてもいつも事務員ばかりの対応で、進捗状況を聞いても「弁護士が席をはずしているのでわからない」などという返答が続く場合は、気を付けなければいけません。
最悪のケース、この事案が放置されているという可能性もあります。
弁護士や認定司法書士によっては、返ってくる過払い金の額が小さいと成功報酬も少なくなることから、そういった案件は後回しにすることがあります。
しかし、依頼者にとっては、すでに切迫した状況であるから弁護士に依頼するわけで、一日も早い解決を望んでいるのです。
そのことは弁護士や認定司法書士であれば承知しているはずですので、それを放置しているとなれば問題です。
また、手続きの進捗状況を説明するとともに、債権者とやりとりをした取引履歴などの必要書類についても、依頼人に報告なり、返却なりされるべきです。
どんな書類も後々いろいろな意味で証拠となります。
⑥着手金を払ったのに、突然手続きを中止された
高額な着手金や諸費用を払ったにもかかわらず、突然「過払い金の返還の見込みがなくなった」などといわれ、手続きが中止されたという被害もあります。
この場合は、実際に債権者側が倒産したなどという正当な理由である場合もありますが、単なる悪徳な手口である可能性も否定できません。
例えば、過払い金返還請求が大ブームであったころには、着手金を払った途端全く連絡が取れなくなるという、悪徳法律事務所も横行していたといわれています。
この場合には、本当に資格をもった弁護士や司法書士であったのかもわからないところです。
このような悪徳法律事務所では、一度相談に行くとその後も電話などで、「今までの借金を取り戻せるかもしれない」などと、甘い言葉で執拗に勧誘するといいます。
そして挙句の果てに高額な着手金を払わせるという、法律事務所としては信じられないような手口もあります。
日本弁護士連合会も問題視
このような過払い金返還請求でのトラブルが多発したことから、2011年、日本弁護士連合会もこれを大きく取り上げ、債務整理について規定を発表しました。
- 弁護士自らの面談の義務化
- 不利益になる事の説明の義務化
- 弁護士氏名明示の義務化
- 過払い金が発生している案件のみの請負禁止
- 進行状況・結果の報告の義務化
- 報酬上限の設定
このような規制がしかれたことで、以前のようなひどいトラブルは減少しているようですが、自分自身でも情報収集をし、ある程度の知識をつけることも大切です。
債務整理にはどのような種類があるか、一つ一つの債務整理の相場、どのくらいが正当な着手料か、などということを知っておけば、いざ勧誘された時や、高額な報酬を請求された時などに、それが法外かどうか見分けることができます。
逆に、あまりにも安い報酬やうまい話で誘ってくるようであれば、詐欺では?と疑うこともできるでしょう。
当サイトでは、債務整理を扱う弁護士・司法書士を地域別にまとめていますので、そちらも参考にしてみてください。報酬も記載していますので相場を確認する参考にもなります。
弁護士や認定司法書士に依頼するときに確認すべき事
よくあるトラブルについてお話してきましたが、こういったトラブルに巻き込まれないよう、自分でもある程度の知識を持つことが大切です。
現在ではインターネットの普及から、容易に様々な情報収集ができますので、弁護士や認定司法書士にすべてお任せではなく、基本的な情報については調べてみることをおすすめします。
そして、正式に依頼する前に、以下のようなことを確認しておきましょう。
①手続きの過程で必要であった取引履歴や和解金額などに関する書類を全て見せてくれるかどうか
手続きを進めていく過程では、債権者との様々な書類のやり取りがあります。
その内容は依頼人が知っておくべきですので、全て提示してくれるかどうか確認しましょう。
②手続きにかかる費用を書面で提示してくれるか
依頼前に、着手料、成功報酬金の額、さらに追加料金の有無について、明確な書面での提示を求めましょう。
あいまいな表現であると、後からごまかされる可能性があります。
また、実際に受け取れる過払い金が低い場合は、弁護士費用と相殺すると赤字となる可能性があります。
そうなると手続きをしても逆に経済的負担が増えてしまうので、そこまで確認してみるとよいでしょう。
③過払い金が手元に戻るまでどのくらいの期間がかかるか
過払い金が実際に手元に届くまでどのくらい期間がかかるか、あらかじめ聞いておくべきです。
また、その流れや手順も合わせて確認しておけば、万が一進捗状況がわからない、いつまでも過払い金が支払われないという時に、自分でおかしいと気づくことができます。
いざという時には、法テラスへ相談
万が一トラブルに巻き込まれてしまったり、何かおかしいな?と感じても、それを誰に相談してよいかわからないということが、そのまま泣き寝入りしてしまう大きな原因の一つです。
新しい弁護士に相談するにも、もう一度弁護士費用を払う余裕はないというのも本音でしょう。
このような時には、法テラスへ相談してみるのも一つの手です。
法テラスは、法的トラブル解決に必要な情報やサービスの提供を目的として、国が設立した機関です。
経済的余裕がない人のために、弁護士費用の立て替えも行っています。
まとめ
債務整理をしたことにより、依頼人と弁護士や認定司法書士との間に発生するトラブルについて解説してきました。
切羽詰まった状態で債務整理を依頼したにもかかわらず、信頼すべき弁護士との間で金銭トラブルが起きるという悲しい結果となるケースがあります。
弁護士の説明不足や経験不足、また依頼人の理解不足が原因だったということもあります。
しかし中には、依頼人が法律に関して素人であることをいいことに、相場より高額な報酬を要求したり、返還された過払い金を着服したりという、悪質なケースもありました。
このようなトラブルに巻き込まれないためにも、自分でも情報収集をして、債務整理の種類、報酬の相場などについて、ある程度知識を持っておくことが必要です。
少しでも知識があれば、何かおかしいな?と感じ、納得できる説明を要求したり、他へ相談するきっかけとなります。
また、おかしいな?なぜかな?と感じた時には遠慮せずに即問い合わせましょう。
納得できる説明がなかったり、ごまかすようであれば、法テラスなどへ相談することをお勧めします。
なお、今回の記事では、弁護士や司法書士側の問題で起こるトラブルについて紹介してきましたが、弁護士や司法書士に対して依頼者が借金額をごまかして報告するなどの嘘をついたりするトラブルもありえます。
弁護士や司法書士に嘘をつくとどうなるのかは下記の記事で解説していますので参考にしてください。
【参考】債務整理で嘘をつくとどうなる?弁護士や司法書士・裁判所の対応は?
また、当サイトでは、債務整理を扱う弁護士・司法書士5,200件以上を地域別にまとめていますので、そちらも参考にしてみてください。
債務整理の口コミや、評判の高い法律事務所についても紹介しています。
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