債務整理で楽になったはずなのに、様々な理由で再び借金返済に追われるというケースも少なくありません。

例えば、

  • 病気やケガなどで働けなくなってしまった
  • 月々の収入が予定より減り、返済計画通り支払えなくなってしまった
  • 任意整理で対象から外しておいた借金がふくれあがった

などなど。また、一度は完済したものの、再びキャッシングなど借金を繰り返してしまうということもあります。

そこで浮かんでくる疑問が「2回目の債務整理を行うことはできるのか?」ということです。

結論から言うと、債務整理を2回行うことは可能です。

ただし、2回目ともなると初めて債務整理したときに比べてハードルが高くなることは確かです。

また、1回目の債務整理の種類によって2回目の債務整理に影響が出てきます。

2回目の債務整理と一言でいっても様々なパターンがあり、個々の状況によって可能かどうかは変わってくるのが実状です。

それでは、債務整理を2回目にする場合について解説していきます。

1回目の債務整理が任意整理の場合

初めての債務整理で任意整理をし、その後また債務整理をしたいという場合は、以下のようなケースが考えられます。

  • ①任意整理で計画した毎月の返済が依然厳しく、払いきれなくなってしまった
  • ②任意整理したときに、例えば「クレジットカードを残したい」などの思いから対象からはずした借金があり、それが膨らんで返しきれなくなった
  • ③多重債務のため自分でも忘れていた借金があり、任意整理対象に組み入れることができなかった

任意整理後、計画した返済ができなくなった場合

任意整理は、裁判所を通さず債権者との交渉により減額してもらう方法です。法律的には回数制限はなく何度でも行うことができます。

同時に、その名の通り「任意」の債務整理であり、裁判所の通告により強制的に行われるものではありません。あくまでも債権者の同意の上に成り立つものです。

言い換えれば、債権者が同意してくれなければ、成立しません。

上記①のような場合、2回目の任意整理をして返済条件を変更してもらうよう交渉することもできます。

しかし、債権者側としては「1回目の任意整理ですでに大幅な緩和処理に合意した」という思いがあります。

そこでまた、払えそうにないのでもう一度任意整理をしたいといっても、簡単には認めたくないというのが本音でしょう。

そのため、1回目の任意整理よりも条件は厳しくなると考えられます。

この辺りは債務者本人と債権者との信頼関係も絡んできます。

例えば、一回目の債務整理の返済が半分以上きちんと払い込まれていたような場合は、温情で認めてくれることもあるようです。

全ては債権者が同意するかしないかにかかっているのです。

万が一、2回目の任意整理が認められず、支払いが困難になった場合には、民事再生や自己破産に切り替えるということも一つの方法です。

任意整理の追加

上記②③のように、1回目の任意整理の対象とせず残した、または整理対象に組み入れることを忘れてしまった場合があります。

このようなときには、追加の任意整理をすることができます。

この場合に気を付けることは、すでに1回目の任意整理を行い返済計画を立てていますので、追加の任意整理をすることで、合計返済額が増える可能性があるということです。

自分の返済可能額を考慮に入れ、専門家とよく相談することが必要です。

1回目の任意整理を完済した後に、再び任意整理を行いたい場合

ところで、1回目の任意整理をきちんと完済し、数年後、新たにクレジットカードなどの利用額が増えて返済が厳しくなったというケースはどうでしょうか?

この場合には、1回目の借金はすべて返済しているので、賃金会社からの信用度もある程度回復しており、2度目の任意整理も認められることが多いです。

民事再生(個人再生)への切り替え

任意整理を行った後、事情が変わって民事再生(個人再生)に切り替るというケースがあります。

民事再生に切り替える理由は2つあります。

①任意整理での返済が困難

任意整理した後、なんらかの理由で毎月の返済が困難になることがあります。例えば、病気やケガ、または転職や景気悪化による収入の減少などです。

そもそも任意整理では減額幅が少なく、思ったほど返済額が減らなかったという場合もあるでしょう。

このような理由で返済が困難になった時には、民事再生への切り替えを検討します。

②任意整理での和解が成立しなかった

任意整理は債権者との交渉の上、和解契約を結ぶことで成り立っています。

交渉の際、大半の債権者が和解に同意したとしても、一部の債権者はこれに応じないというケースもあります。

そして、万が一この反対している債権者が訴訟を提起し、債務者側が訴訟に敗訴すると、差し押さえなどが行われ、和解に応じた債権者への支払いもできないという事態に陥ってしまいます。

このような場合も、裁判所を通した法的強制力のある民事再生に切り替えることで、そのメリットを生かすことができるでしょう。

民事再生に切り替えるメリット

  • ①任意整理と比較すると、減額幅が大きい
  • ②法的強制力があり、「給与所得者等再生」を選べば、整理案に反対する債権者の有無は関係なく債務整理ができる(「小規模個人再生」では、債権者数または債務総額の1/2以上にあたる債権者の同意が必要)

民事再生に切り替えるデメリット

  • ①住宅ローン以外のすべての債務を一括整理するため、保証人付き債務がある場合は要注意(減額した分の債務は保証人に請求される)
  • ②官報に載る

1回目の債務整理が民事再生の場合

民事再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2種類があります。

どちらを選択したかによって、2回目の扱いが変わってきます。

1回目に「小規模個人再生」を利用した場合は、2回目以降の申し立てに制限なし

1回目が「小規模個人再生」であった場合には、いつでも2回目以降の申し立てができます。

例えば、再生計画の返済中に、「状況が変わり返済が厳しくなってきた」などの理由から再整理を目的として、再申し立てをすることが可能です。

また、3年かけて無事に弁済を終えたものの、その後に再び消費者金融などに手を出し、借金が増えてしまったというケースでも、再度申し立てが可能です。

この場合、2回目に「小規模個人再生」「給与所得者等再生」のどちらも選ぶことができます。

1回目に「給与所得者等再生」を利用した場合は7年間の制限もある

1回目の民事再生で「給与所得者再生」を選択した場合、2回目に「小規模個人再生」を利用するのであれば、いつでも再申立てが可能です。

計画通りの返済が難しくなった時など再生計画の途中でも利用し、再整理をすることができます。

しかし、2回目にも「給与所得者等再生」を利用したいということになると制限がでてきます。

「給与所得者等再生」を2回続けて利用したい場合には、原則として1回目の再生計画案認可決定の確定から7年間経過してからでなければ、申し立てはできません。

これは、給与所得者等再生の場合、債権者が異議申し立てをすることができず同意なしに利用できるため、何度でも申し立てができるとなると、債権者が多大な不利益をこうむる可能性があるためです。

ところで、民事再生では、3年間もしくは5年間で債務を完済することになっていますね。

ということは、再生計画案認可決定の確定から7年間というと、当然再生計画の遂行期間はそのうちに入ります。

つまり、再生計画遂行期間中には「給与所得者等再生」の再申立ては不可能となります。

1回目の「給与所得者再生」を無事に遂行し全ての返済を終えた後、数年後に再び消費者金融などに手を出し借金が膨らんでしまったなどという時も、この制限は変わりません。

1回目の再生計画案認可決定の確定から7年経過した後であれば、再び「給与所得者等再生」を申し立てることは可能です。

ハードシップ免責

再生計画に沿った返済がどうしても困難となった場合、上述したように再度、民事再生の申し立てをして、再生計画の見直しをすることができます。

加えて、返済状況によっては、「ハードシップ免責」を受けられる可能性があります。

これは、以下の条件を満たしたときに残りの残務の免責が受けられるというものです。

  • ①再生計画の3/4以上の返済が終わっている
  • ②病気など、債務者に責任のない事情により、収入が途絶えてしまった
  • ③再生計画の変更が事実上困難

 

これらの条件が満たされていれば裁判所の判断により免責許可が下りることがあります。

民事再生から自己破産へ切り替え

民事再生の返済途中に、様々な事情で収入が完全に途絶えてしまったというときには、自己破産への移行も考えられます。

ただし、単に支払いが困難になったから自己破産したいといっても、簡単に認められるわけではありません。

自己破産は「債務者が支払不能に陥っている」ことが条件の一つとなっています。

民事再生の手続きで、すでに大幅な債務の減額が行われているのですから、この状態で支払不能という説明は、説得力に欠け難しいケースがあります。

毎月の返済が滞ってしまい、債権者が再生計画の取り消しを申し立てたのであれば、自己破産への切り替えが可能です。

なお、債権者の書面決議による否決、裁判所の判断で不認可となった時点で自己破産へ移行する場合もあります。

民事再生の再生計画を遂行後、自己破産はできるのか?

民事再生計画を遂行し無事に全ての返済を完了した後、万が一再び借金に追われてしまった場合、自己破産はできるのでしょうか?

これは、1回目の民事再生が「給与所得者等再生」だった場合には制限があります。

1回目の債務整理に「給与所得者等再生」を利用した場合には、再生計画案認可決定の確定日から7年間は自己破産による免責許可が下りない、すなわち自己破産しても借金がなくならないことになっています。

ただし状況によっては裁量免責が下りる可能性があります。

また、上記のハードシップ免責を受けた場合も、その後7年間は自己破産をすることができません。

1回目の債務整理が「小規模個人再生」の場合は、期限の制限なくいつでも自己破産の申立てができます。

1回目の債務整理が自己破産の場合

1回目の債務整理で自己破産をしても、2度目の債務整理が不可能ということはありません。

2回目も自己破産をしたい

1度自己破産した後、不幸にも再び自己破産をするような状況に陥ることもあるかもしれません。

原則として、1回目の自己破産の免責許可決定の確定日から7年以内の自己破産は、免責不許可事由となります。

そのため、自己破産申し立てをしても、免責許可が下りる可能性は低いです。ただし、事情によっては裁量免責が下りることもあります。

1回目の自己破産の免責許可決定の確定日から7年が経過していれば、2度目の自己破産申し立てが可能で、免責許可が下りる可能性が高いです。

ただし、ここで大きな問題となるのが、「免責不許可事由」です。

例えば、ギャンブルや浪費での借金、クレジットカードの現金化、闇金からの借金などは免責不許可事由です。

初めての自己破産では、これらの事由があっても裁量免責が下りるケースが多いですが、2回目となると判断が大変厳しくなるのです。

1回目の自己破産で多額の借金返済義務を免除してもらったにもかかわらず、再び浪費やギャンブルなどを繰り返すことにより、「反省が不十分、生活改善の意識が足りない、今後改善の見込みがない」とみられる可能性があります。

また、1回目に比べると、免責不許可事由の基準や調査自体も厳しくなる可能性があり、より細かく収支状況を調べられるということもあります。

リストラや病気などの理由でない限り、裁判官の目もかなり厳しくなるでしょう。

自己破産を2回するということが免責不許可事由ではありません。自己破産をした後の反省度、今後改善の見込みがあるかないかが重要です。

自己破産には様々なデメリットもあるため、債務整理の最終手段として考え、またやむを得ない状況の時には一生に一度と心に決めて、その後計画的な生活を送ることが重要です。

自己破産の後に、民事再生や任意整理はできる?

自己破産の後、民事再生をすることは可能です。ただし、免責許可決定の確定日から7年間は行うことができません。

民事再生の場合は、借金の内容を問われることがありません。そのため、自己破産で免責不許可事由に該当し、免責が下りなかった場合は、民事再生を検討することも一案です。

任意整理の場合は、法的措置ではないため、債権者との話し合いで和解が成立すれば問題ないでしょう。

まとめ

債務整理を2度目にする場合の疑問点について解説してきました。

債務整理を2回行う方法はいくつかあります。

しかしながら、2回目となると1回目と比べ評価の目が厳しくなり、ハードルはかなり高くなることが考えられます。

①任意整理は、基本的に債権者との交渉で和解できれば2度目も可能。任意整理から、民事再生への切り替えもできる。

②民事再生では、「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」があり、それぞれ扱いが異なる。ケースにより、2度目の給与所得者等再生、2度目に自己破産する場合などには、7年間の期限制限がある。状況によっては民事再生から自己破産への切り替えもできる。

③自己破産の後、2度目の自己破産・民事再生には7年間の期限制限がある。

 

法律は複雑で、さらに個人の状況にも様々なケースがありますので、まずは専門家である弁護士や司法書士の無料相談を利用するのが便利です。

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