債務整理を依頼する専門家として、弁護士と司法書士が挙げられます。
債務者本人では難しい交渉などに代理人として対応することができます。
ここでいくつかの疑問が浮かんできますね。
どちらも債務整理に対応できると聞いたことがあるけれど、果たしてどちらに依頼するべきか?そもそも、弁護士と司法書士の違いはなんだろう?
実は、弁護士と司法書士はどちらも法律の専門家で、債務整理を行うことができます。
弁護士はその業務内容に何の制限もない一方、司法書士に依頼する場合は、いくつかの制限に気を付けなければなりません。
今回は、債務整理での弁護士と司法書士の違いについて解説していきます。
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目次
弁護士と司法書士はどんな職業?
弁護士というと、メディアに取り上げられることも多く、その仕事内容についてイメージはしやすいものです。
法律相談や様々な裁判における弁護など、法律の専門家として法律に関わる全ての業務を行うことができるのが弁護士です。
一方、司法書士の仕事についてはあまり知られていないません。
主な業務として登記や供託などが挙げられ、弁護士の仕事があまりにも広範囲なため、それを補完するるために必要不可欠な存在となっています。
弁護士とは?
弁護士になるためには、難関である司法試験に合格し、さらに司法修習を終えてから弁護士会に所属することになります。
弁護士は法律の専門家で、法律に関わるあらゆる問題を解決へ導くことができます。
その業務内容には制限がなく、小さな日常生活における法律相談から法律事務、大規模な訴訟行為まで様々です。
「すべての訴訟の代理人」を務めることができるのが特徴です。
司法書士とは?
一方、司法書士は司法書士試験に合格した人で、司法書士会に所属しています。
主な業務として不動産の登記、供託が知られていますが、そのほか、裁判所、検察庁、法務局への書類作成、提出を代行することができます。
司法書士も法律の専門家であることには変わりがないのですが、その業務範囲には制限があります。
2003年の法改正により、司法書士の中で法務省の認定を受けた「認定司法書士」は、「簡易裁判代理人」を務めることが認められました。
また「示談交渉権」も与えられています。
司法書士でも債務整理はできる
債務整理には、任意整理、民事再生、自己破産などの方法がありますが、実は司法書士はもともと、民事再生(個人再生)や自己破産の申立書作成の代理人業務を行っていました。
そのため、債務整理について豊富な知識をもつ司法書士も多いです。
上記のように、認定司法書士に「示談交渉権」と「簡易裁判所代理権」が認められたことにより、新たに任意整理も対応可能となり、業務の幅が広がったことになります。
ただし、弁護士があらゆる状況の債務整理に対応できる一方、司法書士の業務範囲には制限があるので、注意が必要です。
司法書士の債務整理
司法書士が対応できる債務整理には制限があります。
民事再生と自己破産は書類作成代理のみ
債務整理の中で、裁判所への申し立てが必要なものに「民事再生」と「自己破産」があります。
自己破産では、地方裁判所への申し立て書類の提出はもちろん、裁判所へ出頭して裁判官との面談などが行われます。これは審尋と呼ばれます。
民事再生でも同様ですが、裁判所によっては審尋は行われない場合もあります。
弁護士は、すべての訴訟の代理人として認められているため、審尋の際、地方裁判所へ同行して複雑な対応をサポートすることができます。
それでは、司法書士はどうでしょうか?
司法書士の権限は、あくまでも「簡易裁判所のみ」です。地方裁判所以上の訴訟代理人権限をもっていないので、民事再生や自己破産の審尋の際、裁判所へ同行することができません。
申立てに必要な書類の作成については、プロですから問題なく対応できます。
また、書類作成以外は何もしないのかというとそうではなく、書類の作成、裁判所への申し立て、免責確定または再生計画認定まで、最後までサポートを行います。
裁判所へ同行できるかできないかが弁護士との違いです。
審尋については、どのような対応をすればよいか等のアドバイスをしてくれるでしょう。
司法書士の任意整理
各社の債務額は140万円以下
法務省から認定を受けた司法書士に「示談交渉権」「簡易裁判所代理権」が与えられたことで、相手方との和解交渉が必要な任意整理を行うことができるようになりました。
しかし、司法書士が対応できる任意整理は、「各社の債務金額が140万円以下」と定められています。
これは全債務の総額ではなく、あくまでも一社から借りている金額です。
例えば、全債務額が300万円であっても、A社120万円、B社80万円、C社100万円であれば、司法書士に依頼できます。
これ以上の金額である場合には、弁護士に依頼することになります。
過払い金請求も140万円以下
各社の債務額だけでなく、過払い金にも140万円以下というボーダーがあります。
賃金業者1社からの過払い金が140万円を超える場合には、司法書士は対応できません。
過払い金が多くなりそうな場合には、弁護士に依頼することになります。
どれだけ過払いがあるかわからない時には、とりあえず司法書士に相談しても問題ありません。
権限は簡易裁判所まで
司法書士は、権限が「簡易裁判所のみ」となっていますので、地方裁判所以上の訴訟は対応できません。
多くはありませんが、任意整理の手続き中、相手方が訴訟を起こすというケースもあります。
簡易裁判所で話がまとまらず地方裁判をへ持ち込みとなると、そこで新たに弁護士を探して依頼するということになります。
弁護士と司法書士、どちらに依頼するべきか?
それでは、弁護士と司法書士、どちらに依頼するべきなのでしょうか?
司法書士に依頼する場合はいくつかの制限がでてきます。
民事再生と自己破産
民事再生と自己破産を司法書士に依頼した場合、代理人として裁判所へ同行することができません。
裁判所での対応などに不安がある場合は、弁護士に依頼する方がよいかもしれません。
任意整理
任意整理は、各社への債務が全て140万円以下であれば、弁護士、司法書士双方から同等のサポートを受けることができます。
ただ、万が一債権者が訴訟を起こし、地方裁判所まで持ち越しになったことを考え、弁護士に最初から依頼するというのも一案です。
報酬額の違い
債務整理を考えた時には、すでに経済的に厳しい状況に置かれており、専門家に依頼したいが費用が心配という人も多いはずです。
そのため、依頼費用を比較して決めるという方法もあります。
一般的に司法書士の方が費用が割安な場合が多いといわれています。ただし、その分できる業務内容に制限もあります。
また、司法書士は「街の法律家」といわれるように、一般の人たちからより身近で馴染みがあることから、相談しやすいというメリットがあります。
一方、最近では弁護士の数が増え、着手金無料で対応するという法律事務所も増えてきました。
このようなことから、一概にどちらに依頼するのが良いとわりきることは難しいものです。
個々の債務の状況はもちろん、交渉力の高さ、話しやすさなどを考慮し、複数の専門家を比較してみてはいかがでしょうか。
まとめ
債務整理における弁護士と司法書士の違いについて解説してきました。
弁護士も司法書士も、法律の専門家であり債務整理を行うことはできますが、司法書士には業務内容に制限があります。
民事再生・自己破産の場合、弁護士は申し立てから裁判所への同行まで、全て対応できますが、司法書士は裁判所へ同行することができません。複雑な裁判所での対応に不安な場合は、弁護士に依頼する方が安心です。
任意整理の場合は、弁護士は債務の金額などに制限なく全ての債務に対応できる一方、司法書士は、各社の債務額が140万円以下という制限があります。
報酬については、一般的には司法書士の方が低く抑えられるといわれ、さらに一般の人からなじみやすいという利点があります。
一方、着手料無料で対応する弁護士も増えており、一概にどちらに依頼するのが良いとわりきることは難しいものです。
複数の専門家を訪ね、様々な角度から比較してみるとよいでしょう。
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