今回は、株取引やFXの借金は債務整理できるか?という疑問について解説していきます。
株の信用取引やFXは、ハイリターンを見込める一方でリスクも高く、急激に金融相場が動いた時などには多大な負債を抱えてしまうことがあります。
その額は場合によっては千万円単位という高額なものともなり、到底払える金額ではないと思い悩んでしまうケースも少なくありません。
また、千万円単位の高額な損失とはいかなくても、取引資金や追証の支払い資金として消費者金融などから借入をして負債が膨らんでしまったというケースも多いです。
しかし、こういった状況に陥っても決して一人で思い詰める必要はありません。
なぜなら、株の信用取引やFXでできた借金も債務整理が可能だからです。
なお、自分の借金が債務整理でどれくらい減るか知りたい場合は、借金減額シミュレーターが便利です。
目次
高額な負債を抱えてしまったら自己破産
投資家の多くは、大きな金額での取引を行っている場合が多いです。
そのため、万一負債を背負ってしまった場合、その額も千万単位となることも少なくありません。
このような場合、だれもが自己破産を考えるでしょう。
莫大な借金もゼロとなるメリット
自己破産では、全ての借金がゼロとなるため、莫大な負債を抱えた場合は利用価値が高い救済措置です。
ただ、自己破産をすることにより、いくつかのデメリットが考えられます。
①家や車などほとんどの財産を失う
②個人信用情報に5年から10年の間事故情報として記載され、その間は新規借入ができない
しかし、到底払いきれないような多額の借金から解放され、一からやり直すことができるため、そのメリットは大きいといえます。
株の信用取引やFXは免責不許可事由にあたるのか?
いくつかのデメリットはあるものの、多額の借金に苦しむ人の救済措置である自己破産は、株取引やFXの借金の整理に有効な手段です。
しかし、ここで一つのハードルとなるものが、「免責不許可事由」です。
実は自己破産の場合、全てのケースで免責になるという保証はなく、その借金の内容を問われる場合があります。
この免責不許可事由として挙げられているものの一つが「浪費や賭博、射幸行為(ギャンブルなど)」です。
そうなると、「株取引やFXがこの射幸行為に当たるか?」が問題となってくるわけです。
単純に考えれば、株取引やFXもギャンブルに値する行為ととることができ、免責不許可となり得る事由でしょう。
しかし、破産法上「裁量免責」が認められており、「借金ができた経緯や事情を考慮して免責にすることができる」と定められています。
つまり、裁判官の判断により免責となる可能性があるのです。
「過去に株取引やFXで自己破産をしている」
「反省の色が見えず生活改善や更生の意識がない」
「まだ株やFX取り引きを続けている」
など、裁判官の心証を損ねるようなことがなければ、裁量免責となる可能性が高いです。
弁護士や司法書士は免責について詳しいので、どういった行動をすべきかよく相談するとよいでしょう。
民事再生は使いやすい制度
株の信用取引やFXで多額な借金というと自己破産をイメージしがちですが、実は民事再生も効果的な債務整理の一つです。
まず、民事再生の場合、借金の内容を問われることがありません。それが浪費であろうがギャンブルであろうが、あらゆる借金を整理することができます。
もちろん、株取引やFXでも問題なく減額の対象となります。
ですので、万が一自己破産で免責を受けることができなかった場合も、民事再生に切り替えて手続きするとよいでしょう。
また、株の信用取引やFXでありがちな莫大な額の借金であっても、その高い減額率により返済可能な金額まで圧縮できる可能性があります。
借金の総額 | 民事再生での減額 |
---|---|
100万円まで | 全額 |
100万円~500万円未満 | 100万円まで減額 |
500万円~1500万円未満 | 債務額の1/5 |
1500万円~3000万円未満 | 300万円まで減額 |
3000万円~5000万円未満 | 債務額の1/10 |
上の表からわかるように、例えば、FXでの借金が3,000万円であった場合には、民事再生により、その1/10つまり300万円まで減額することができるということです。
3000万円の返済は到底無理だと思っている人でも、300万円であればなんとか返済できる可能性があります。
この返済は3年または5年間で完済する必要があり、今後も継続的な収入のあることが条件となりますが、条件が合えば利用価値の高い救済措置です。
また、民事再生では自己破産と異なり、家や車などの財産を手放すことなく債務整理ができることが大きなメリットです。
なお、民事再生は債務額が5,000万円以上の場合は利用できません。
金額が小さければ任意整理でも
さて、株の信用取引やFXで負けてしまうと、冷静さを失い損失を取り返さなければと考えてしまいます。
負けたときに業者へ支払う追証のため、さらには新たに株やFXを買う取引資金として消費者金融から借入をしてしまうケースも少なくありません。
はじめは少額であっても、繰り返し借り入れることで気が付いた時にはその債務が膨らんでいたということが多いです。
株式市場や為替市場の激変などによる莫大な借金とはいかないものの、資金調達などのために膨らんだ借金の返済が苦しいなどという場合には、任意整理を行うこともできます。
任意整理は、裁判所を通さずに債権者との話し合いにより減額してもらう方法です。
消費者金融やクレジットカードのキャッシングは利息が高い場合が多いので、その利息分をカットするよう交渉し、結果的に返済総額を減らしてもらえる可能性があります。
どの債務整理も利用できないときは?
「もし、自己破産で免責とならなかったら?」
株の信用取引やFXで多額の借金を背負った場合に、債務者を悩ませる理由の一つがこれです。
上記で述べた通り、株の信用取引やFXが原因の借金でも、裁量免責が下る可能性は十分にあるのですが、ネット上などで「自己破産してもギャンブルの借金は免責にならない」という情報が氾濫しており、債務者を混乱させてしまうようです。
また自己破産で免責がおりなくても民事再生という手段もあります。
しかし、万が一自己破産や民事再生などいずれの債務整理も選択できない状況に陥った場合は、どう対応すればよいでしょうか?
時効を待つ
一つの考え方として、「開き直って時効を待つ」ということがあります。
FX業者や証券会社が訴訟で確定判決を得ると、その消滅時効は10年です。つまり、強制執行をかけることができるのは、基本的にこの10年間となります。
例えば、FXで証券会社に借金を作ったとき、証券会社は裁判をおこして差し押さえなどの強制執行の手続きをとる可能性があります。
強制執行となると、給与口座の差押えや、財産の差押えが実行されます。しかし、給与口座の差押えといっても全額持っていかれるわけではなく、基本的には手取り額の1/4という規定があります。(ただし給与が多い場合にはこの限りではありません。)
また、財産の差押えも、生活に最低限必要なものは残すことができますので、不便で節制が必要にはなりますが、なんとか生活していけるものです。
時効までの10年間にどれだけ強行に取立てを行うかは業者によって変わってきますが、中には、取れないところに無駄な労力を使わないという方針の業者もあります。
そして、10年が経過した時点で時効を主張すれば、その後は強制執行の行使はなくなります。
そのほか、債権者からの取立てが続くときには月々の支払い額について債券者と話し合うことも、対策の一つとして考えられるでしょう。
もちろんこれはケースバイケースで、個々の状況により変わってきますので、どういった対応が自分にとって最善な方法かは、専門家とよく相談する必要があります。
一人で抱え込まない
ここで最も大切なことは「一人で抱え込まない」ということです。専門家に相談すればよい解決策が必ず見えてきます。
多くの弁護士や司法書士が無料相談を行っています。さらに実際に依頼するというときには着手金無料の事務所や、弁護士費用を分割後払い可能という対応をとっている事務所も多いです。
このようなシステムを利用し相談することにより、一人で抱え込んでいるときの強いストレスからも解放されることでしょう。
なお、当サイトでは、債務整理を扱う弁護士・司法書士5,200件以上を地域別にまとめていますので、そちらも参考にしてみてください。
また、債務整理の口コミや、評判の高い法律事務所についても紹介しています。
まとめ
今回は、株取引やFXの借金は債務整理できるのか?という疑問について解説してきました。
- ①到底返せる見込みのないような莫大な債務を背負ってしまったら自己破産を考える。
- ②株やFXの借金は自己破産で免責とならないといわれるが、裁判官による裁量免責となる可能性が十分にある。
- ③民事再生は、借金の原因を問われることがなく株取引やFXでの借金でも問題がない。自己破産で裁量免責が下りなかった場合には、切り替えて手続きを行うとよい。また、自己破産と異なり、財産を失うということがなく、借金の大きな減額が期待できるため、継続して収入の見込みがある人は、初めから民事再生を行うという方法もある。
- ④負債金額が小さい場合は、任意整理を利用することも可能。
- ⑤通常、自己破産も民事再生もいずれの債務整理も選択することができないということは大変まれだが、万が一そういった事態になった場合には、債権者による強制執行が行われる可能性がある。強制執行といっても、最低限の生活に必要なものは差し押さえとならないので、不便にはなるが生活していくことはできる。
- ⑥10年経過し時効が切れると、債券者による強制執行の効力はなくなる。
- ⑦債権者の取立てが続く場合は、話し合いの場を設け、現実的な月々の返済額を設定することも一策。
- ⑧しかし、いかなる場合も専門家とよく相談することが第一であり、一人で抱え込まないことが重要。
- ⑨多くの法律事務所が、無料相談や着手金なし、弁護士費用分割払いなどのシステムを取り入れている。
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