今回は、債務整理による銀行口座凍結について、その期間や対策と併せて解説していきます。
銀行からの借入を債務整理すると、その銀行の口座は凍結されてしまいます。
口座が凍結されると、お金の引き出しができなくなり、さらには光熱費等の引き落としもストップします。
給与が振り込まれても引き出しができないのでは、生活に支障をきたしますので、事前対策を講じる必要があります。
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目次
銀行からの借入があるときは注意
銀行からの借入には、住宅ローン、マイカーローン、銀行カードローン等があります。
こういった銀行からの借り入れを債務整理の対象としたとき、その銀行に開設している口座が凍結、さらには相殺されることがあります。
- 「凍結」とは、その口座からお金を引き出すことできない状態をいいます。
- 「相殺」とは口座残高を強制的に引き落とし、返済に充てることをいいます。
例えば、銀行カードローンでお金を借りていて、そのカードローンの借入分を債務整理の対象とすると、銀行は少しでも借金未回収のリスクを回避しよう動きます。
そこで、まず同じ銀行にある口座を「凍結」してしまいます。
そして、その口座に預金残高が残っている場合には、その預金残高とカードローンの借入残高を「相殺」し、少しでも多く借金を回収しようとします。
仮にカードローンの借入残高が50万円、口座残高が20万円とすると、相殺されることにより、カードローン残高が30万円となります。
このように、口座に残っているお金は、そのまま借金の返済に充てられるということです。
任意整理の場合
任意整理では、カードローンによる借金の債務整理が多く見られます。
この場合、整理する債務を選択できますので、「預金口座を持っている銀行のカードローンは債務整理しない」ということで、この問題を回避することができます。
民事再生(個人再生)の場合
民事再生では、債務の選択はできず、銀行カードローンであろうと、車のローンであろうと、住宅ローン以外は全て整理をします。
そのため、自分の預金口座のある銀行からこれらの借入があった場合には、預金口座の凍結、相殺は行われるでしょう。
自己破産の場合
自己破産でも債務の選択をすることはできず、全ての借金の整理を一括で行います。
銀行カードローン、銀行からの住宅ローン、銀行からの車のローンなどを含め全てです。
そのため、これらのローンの借入元が、自分の預金口座のある銀行であると、凍結、相殺が行われます。
「凍結」により、自動引き落としも不可能に
口座が凍結されると、口座からの現金引き出しが不可能となります。
給与振り込み口座となっている場合には、凍結後に振り込まれた給与の引き出しができないため、生活に支障をきたす可能性があります。
また、現金引き出しができないだけでなく、自動引き落としもできません。
光熱費、携帯電話代、家賃、クレジットカード代金など、口座から自動引き落としとなっているものは必然的に延滞となってしまいます。
これらは放置しておくと、電気が止められたり、アパートからの退去を要求されるなどの問題がでてきます。
口座凍結されるタイミングはいつ?
債務整理を弁護士・司法書士に正式に依頼すると、弁護士・司法書士は債権者に「受任通知」を送ります。
受任通知とは、債務者が借金の返済を一旦ストップし、債務整理の手続きを始めることを知らせるものです。また、債権者からの督促を止める効果もあります。
口座の凍結が行われるのは、このタイミングです。
債権者として銀行が受任通知を受け取ると、少しでも多く債権を回収したいことから、債務者の預金口座を凍結し、残高がある場合にはそれを借金の一部に充当させ、相殺します。
債務整理を行うということは、債務者が約束通り返済をしないということであり、銀行側には一括返済を請求する権利が発生します。
これに伴い、法律上問題なく口座を凍結、相殺することができるのです。
受任通知を出すことより、債権者からの督促が止まり、月々の返済を一旦ストップできるというメリットがありますが、このタイミングは実は重要です。
早ければ早い方がよいというわけでもないのです。
後でも述べますが、受任通知を出す前に準備したいことがいくつかあるのです。
相殺は、受任通知が届いた時点の口座残高のみ
口座が凍結されると、口座に残っているお金は借金の一部として相殺されます。
そういうと、例えば給与や年金、または何らかの理由でその口座に入金されるお金は、その都度相殺されてしまうのか?と心配になりますね。
でも、安心してください。相殺されて強制引き落としとなるお金は、受任通知が届いた時点の預金残高のみです。
弁護士・司法書士からの受任通知が銀行に届いた時に、口座に残っていた残高が、相殺のために強制引き落としとなります。
その後、仮に給与、年金などが入金されても、法律上これを相殺する権利は銀行にはありません。
口座の凍結はしばらく続きますので、すぐにすぐ口座からひきだすことはできないのですが、借金の一部として取られてしまうことはないのです。
同じ銀行で複数の口座を持っていたら?
銀行カードローンを利用するとき、そのカードローン用に口座を持つことが一般的です。
カードローンを債務整理すれば、このカードローン用口座は、当然のことながら凍結、相殺されてしまいます。
しかし、カードローン用の口座以外に、複数の預金口座を同一銀行に持っているという人もいるでしょう。
こういう場合には、他の口座はどうなるのでしょうか?
残念ながらこのような場合、他の預金口座も凍結、相殺されることが多いです。
また、別支店に口座を持っている場合でも、凍結される可能性があります。
ところで、最近では、大手消費者金融が銀行のグループ会社となるケースが増えていますね。
消費者金融からの借金を債務整理すると、親会社である銀行の口座が凍結されるのか?という疑問がわいてきます。
しかし、グループ会社で債務整理をしただけで、親会社の銀行口座が凍結するということはありません。
あくまでも、その銀行に借金がありそれを債務整理したときのみ、口座が凍結されるのです。
口座凍結は1ヵ月から3ヵ月
一旦口座が凍結されると、その状態は1ヵ月から3ヵ月ほど続くことが多いです。
この期間は、銀行によってまちまちで、さらに解除するために本人ができることはないというのが実状です。
銀行カードローンを債務整理したときには、保証会社が代位弁済を行います。
債務者が払えなかった借金について保証会社が変わって銀行に支払い、その後の債務者への請求も引き受けるというものです。
この保証会社からの代位弁済が行われて、銀行側の債権回収が済んだところで、口座の凍結が解除されるといわれています。
口座凍結に備え、事前対策を
借金返済が苦しく債務整理をしていながら、口座凍結、相殺によりわずかに残しておいたお金も没収されたとなると、心が折れてしまいそうですね。
精神的にも落ち込みますが、生活再建の意味でもマイナスでしょう。
凍結された口座が給与振込口座であると、1ヵ月から3ヵ月の間引き出しができないことになり、長くなれば経済的に追い詰められてしまう可能性もあります。
そのほか、光熱費、家賃などの引き落としができないと、その滞納が続くことで大きな影響を受けます。
このようなことから、口座の凍結・相殺が行われる前に、すなわち、「受任通知が送付される前」に、しっかりとした事前対策を講じる必要があるのです。
受任通知送付前にとるべき対策
①銀行口座を空にしておく
債務整理をする銀行の口座に預貯金がある場合には、受任通知の送付までに現金化するか、他行の口座に移すなどして、口座の残高をゼロにしておきましょう。
受任通知が到着すると、口座凍結の上、口座内に残っているお金は相殺されてしまいます。
②給与振込銀行を変更
給与の振込銀行が債務整理対象の銀行である場合には、他銀行に変更しておきましょう。
債務整理対象の銀行のままだと振込口座が凍結され、給与が引き出せないという事態に陥ってしまいます。
受任通知の到着後に振り込まれた給与は、相殺されることはありませんが、一旦凍結されると1ヵ月から3ヵ月は引き出しができないため、生活に支障をきたします。
③光熱費、家賃などの引き落とし口座の変更
口座凍結により、光熱費、家賃、携帯電話などの引き落としもストップされます。
これらの引き落とし口座を他銀行の口座へ変更したり、振込用紙での支払いに変更しましょう。
まとめ
債務整理による口座凍結について解説してきました。
銀行を対象として債務整理する時には、同一銀行内の口座は凍結され、口座内の預貯金と借金が相殺されることがわかりました。
わずかながら手元に残す予定だったお金が強制的に没収されることは、精神的にはもちろん、生活再建の意味でもマイナスです。
また、口座が凍結されることで、給与を引き出せなかったり、光熱費などの支払いが滞ることになります。
このような事態を避けるために、弁護士・司法書士が受任通知を送付する前に、対策を講じなければなりません。
債務整理対象の銀行の口座残高をゼロにし、給与振込銀行の変更、光熱費等の支払い方法の変更を行いましょう。
なお、どの債務整理の方法が自分に合っているかは、専門家である弁護士や司法書士の無料相談を利用するのが便利です。
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